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こどもの日とワクチン

By 2020年5月5日 No Comments

5月5日は、こどもの日ですね。ふだんなら、動物園や遊園地で遊ぶ子供や家族の姿があるのですが、今は、どこも閉まっています。コロナで、最近、よく聞くワクチン。これは、5年前の取材ですが、こどものワクチンについて、わかりやすく、説明してもらっています。取材の時もそうでしたが、ワクチンについては、いろいろな意見があるようですね。コロナのワクチンも早く開発されて、来年のこどもの日は、賑やかになってほしいですね。

 

いかがでしたか?今回も台本を抜粋して掲載します。この時は、現場で、ずいぶん変更したような記憶があります。事前の台本と、収録で変わることはよくあるのですね。先生のご意見、キャスターの機転の利いたコメントなどなど。以下は、ご参考までに。

 

みなさん、「VPD」という言葉、ご存じですか?

「VPD」とは、ワクチンで防げる病気のことです。

子どもの予防医療である予防接種の啓発に力を注いでいる大阪小児科医会 副会長 ふじおか小児科 院長の藤岡雅司先生。「子どもの予防接種」についてお送りします。

「先生、「VPD」について、もう少し詳しく教えてください」

「VPD」とは「ワクチンで防げる病気」のことです。治療法がない、重症になりやすい、後遺症を残しやすいなど、子どもたちの命や健康を脅かす重い病気はたくさんあります。たとえば、細菌性髄膜炎や百日せき、麻しん、重症の胃腸炎などです。多くの子どもたちが命を落としたり、後遺症を残したりしたからこそ、ワクチンが作られました。今はワクチンによって多くの子どもたちの命や健康が守られています。大切なことは、適切な時期に必要な回数の予防接種を済ませておくこと。いくら良いワクチンがあっても、病気にかかる前に接種を受けておかなければ、子どもたちをVPD(ワクチンで防げる病気)から守ることはできません」

「多くの大人たちは、今の子どもの予防接種を知らない・・・、私たち世代でも覚えているのは●●や□□くらいです」

「予防接種を受けなかったら、ワクチンのなかった昔に戻るのと同じです。医療水準も高く、医療アクセスも良い日本では、自然罹患しても十分な医療を受けられるから、予防接種を受ける必要がないという考えの人がいます。しかし、ワクチンのある疾患は、多くの子どもが亡くなり後遺症を残すような重症疾患だからこそ、世界中の研究者の努力でワクチンが開発されたわけです。予防接種を受けなければ現代でも子どもを守れない、ワクチンがあるにもかかわらず予防接種を受けずに子どもを危険にさらすのは一種の虐待であるということを、きちんと説明する必要があります」

「よく昔は、はしかとか、水ぼうそうにかかっている子がいれば、あなたもかかっておきなさい、ということが言われましたが、いかがですか」

「何でも自然のままが良い、ワクチンのある疾患も自然にかかって、確実な免疫をつける方が良いという保護者もいます。予防接種は健康な体に故意に細菌やウイルスを入れるという危険な行為、できる免疫は「人工的」だから不十分という考えですね。しかし、自然罹患するということは、弱毒化や不活化されていない野生の細菌やウイルス、すなわち一番危険なワクチンを体にいれることでもあるわけです。言わば、自然に罹ることは、一番危険な予防接種を受けるのと同じことなのです」

「ほとんどの保護者は予防接種の対象疾患について実際に経験したことがない・・・経験していないから、あるいは理解していないからこそ、不安などがあるのでしょうね。現在、子どもの予防接種はどうなっていますか」

「子どもたちが普通に受けておくべき予防接種は、0歳で6種類15~16回、1歳で6種類7回、3歳から小学校入学前に3種類5回、小学校で2種類2回と、毎年受けるインフルエンザを除いても、全部で10種類29~30回にもなります」

「生まれて、どのくらいから予防接種をするのですか」

「とりわけ、生後2か月から半年以内、そして1歳から1歳半に多くの予防接種の標準的な接種時期が集中しています。生後2か月になったら、細菌性髄膜炎を予防するヒブと小児用肺炎球菌の予防接種、そして、肝臓がんを予防するB型肝炎と重症の胃腸炎や脳症を予防するロタウイルスの予防接種が開始できます。3か月になったら主に百日せきを予防するために四種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ)が始まります。5か月になったらBCGも忘れずに受けておきましょう」

「私たちの世代では、想像できないくらい多種多様ですね」

「病気は待ってくれませんよ。乳児期早期に受けるべき予防接種の種類や回数が大幅に増えたため、すべての予防接種を適切な時期に接種するためには、生後2か月齢から複数ワクチンを同時接種で実施していかなければいけません。どの病気にいつかかるかを予想することは誰にもできません。したがって、予防接種に優先順位をつけることも不可能です」

「1歳以降は、どのような予防接種ですか」

「1歳になったらすぐに、MR(麻しん・風しん)、水痘(みずぼうそう)だけでなく、おたふくかぜの予防接種も受けましょう。ヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合の追加接種も忘れずに。水痘は1歳の間に2回目を接種します。3歳と4歳は日本脳炎の標準的な接種時期です。小学校に入学する前の年にはMRとおたふくかぜの2回目を受けます」

「先生、さて、予防接種スケジュールを立てるとき、どのようにしたらうまくいくのでしょうか」

「いくつかのポイントがあります。まず、第①に、接種できる時期がきたらすぐにスタート。それぞれの予防接種には、接種できる月齢や年齢が決まっています。接種時期は予防接種の効果が最大になるように決められています。それぞれの病気にかかりやすい時期までに接種を確実に完了しなければなりません。予防接種は「受けられる時期が来たら、すぐに受ける」ことが基本です。いつからいつまでと接種期間が決められていますが、「この期間内に接種すればいい」と考えるのはあまり感心できません。病気にかかる前に受けなければ意味がないからです。かかってしまってからでは遅いのです」

「第②は、同時接種とあります。心配される保護者もいるのではないですか」

「乳幼児期に接種する予防接種の種類や回数は多く、接種できる予防接種があれば、同時接種でおこないましょう。同時接種でおこなうことで、それぞれの病気にかかりやすくなる前に接種を完了できます。結果的に、確実にVPDからお子さんを守ることができます。同時接種で受けることで、予防接種スケジュールが簡単になり、接種忘れも少なくなります。必要な予防接種をすべて受ける同時接種でも、一つひとつばらばらに受ける単独接種でも、効果も副反応も変わらないといわれています」

「最後に、子どもの予防接種に対するアドバイス、お願いします」

「何でも相談できる、かかりつけの小児科医を持つことです。普段から何でも気軽に相談できる小児科医は子育ての強い味方です。予防接種のスケジュールを立てる際にもいろいろな相談に答えてくれます。かかりつけの小児科医になれば、お子さんの普段の様子をよく知っているので、お子さんの体調と予防接種の必要性をきちんと評価して、ベストのタイミングで予防接種を受けることができるでしょう。予防接種はただ接種すればいいというものではありません。VPD(ワクチンで防げる病気)は大切なお子さんが健やかに育ち、これからの人生を有意義に過ごしていくために越えなければならないハードルの一つです。VPDというハードルを上手に越えていくためにも、かかりつけの小児科医という伴走者が必要です。かかりつけの小児科医は、お子さんとご家族に寄り添いお子さんの成長を一緒に見守ってくれる、心強い子育てのサポーターです」

 

いかがでしたか?今は、新型コロナウイルス感染症、このワクチンの開発が待たれます。ワクチンで防げる病気のひとつに、新型コロナウイルス感染症も、早くなってほしいです。

(健康医療ジャーナリスト早川真)

 

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