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食中毒にご注意!

By 2020年6月12日 No Comments

「気温が高い今の時期、多発するのが「食中毒」ですね。ところで、みなさん、たくさんある食中毒の種類や症状、ご存じですか?コロナ禍で、テイクアウトも増えています。今日も、以前に、医療番組で取材したときの構成台本がありますので、抜粋して掲載しますね。

「先生、食中毒というと、細菌やウイルスが付着した食べ物を食べることで起きると思うのですが、なぜ、夏場に多いのですか」

「なぜ夏場に食中毒が増えるのかというと、その理由の一つが「高温多湿な環境」です。食中毒を引き起こす細菌の多くは、室温・およそ20度で活発に増殖し始め、人間の体温ぐらいの温度で増殖のスピードが最も速くなります。また細菌の多くはジメっとした湿気を好むため、湿度も高くなる梅雨頃から食中毒が増え始めます。そしてもう一つの理由は夏バテなどによる私達の体の「抵抗力の低下」ですね」

「食中毒の原因ですが、具体的にどのようなものが多いのでしょうか」

「食中毒の原因となる細菌・ウイルスは、主なものだけでも「カンピロバクター」「ノロウイルス」「サルモネラ」「腸管出血性大腸菌(O-157、O-111など)」「ブドウ球菌」「ウェルシュ菌」「腸炎ビブリオ」と、実に多様です。家庭で梅雨から夏に特に注意したいのが、カンピロバクターと腸管出血性大腸菌です」

「では、ひとつひとつ、もう少し詳しくお願いします。まずは、この時期、注意が必要なカンピロバクターですね。どのくらい発生しているのですか?」

「カンピロバクターの食中毒は、近年、わが国で発生している食中毒の中で、発生件数が最も多い食中毒です。原因食品として鶏肉が疑われるものは、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏のタタキ、鶏わさなどの半生製品などですね」

「続いてO157で知られる「腸管出血性大腸菌」」

「大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害ですが、このうちいくつかのものは、人に下痢などの消化器症状や合併症を起こすことがあり、病原大腸菌と呼ばれています。病原大腸菌の中には、毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす腸管出血性大腸菌と呼ばれるものがあります。この腸管出血性大腸菌は、菌の成分によりさらにいくつかに分類されています。代表的なものは「腸管出血性大腸菌O157」で、そのほかに「O26」や「O111」などが知られています。「O157」とは157番目に発見されたものを持つという意味です。現在およそ180に分類されています。腸管出血性大腸菌は牛肉からの感染がほとんどです。生の肉は細菌が付着していると考えて扱うとよいでしょう」

「サルモネラ菌というと、やはり卵ですか」

「卵が多いですね。鶏の腸内にいるので、卵の殻はもちろん、中身も。ですから、夏場は生の卵はやめてください。十分に加熱することですね。卵がけごはんもこの時期は、控えてください」

「黄色ブドウ球菌は、どのようなものですか」

「これは、比較的短い時間で起こるもので、よく、運動会のおにぎりやお弁当などで発生する食中毒です。普段から、人の皮膚にいる常在菌ですが、この菌が食品中に入ると毒素を産生します。特に、傷口や化膿部分には黄色ブドウ球菌が多いので気をつけましょう。そのため、手袋の予防が効果的といわれています」

「腸炎ビブリオもよく聞きますね」

「原因食品は、夏に沿岸で獲れた魚介類、さしみです。発生のピークは6月~10月。減ってはいますが、強い菌で、肝硬変になったりしますので、注意が必要です」

「そのほかに、注意する菌とかありますか」

「セレウス菌といって、ほとんどの菌が加熱すれば大丈夫なのに、この菌は火に強いのが特徴です。菌そのものが熱に強い芽胞を形成し、通常の加熱処理では殺菌できません。原因食品は、焼き飯などの米飯類、パスタなどのめん類、カレーも当てはまります」

「先生、食中毒の症状は、原因となる食品を食べてすぐ現れる場合と、しばらくたってから現れる場合があるということですが、具体的にはいかがですか」

「カンピロバクターの場合、潜伏期間は1~7日、腹痛や下痢に加えて38℃くらいの発熱があるのが特徴です。腸管出血性大腸菌の場合、潜伏期間は1~14日で、腹痛が激しく下痢に出血を伴います。悪化した場合、毒素が全身に回り、急性腎不全や脳症が起こることがあります。食中毒が疑われるときは、すぐに医療機関を受診することが大切です。受診までは、吐いたものが気管に入らないよう横向きの体勢で安静にします。また、下痢やおう吐で脱水を起こしやすいので、水分と電解質を補給します。もう1つ大切なのは、「下痢止めや鎮痛薬を自己判断で使わない」ことです。薬で下痢を止めると、かえって症状が悪化することがあります」

「先生、夏こそ要注意!食中毒対策 最後にアドバイスをお願いします」

「基本的に、生の肉には食中毒の原因菌が付着しているものと考え、肉を生のままで食べることはできるだけ避けてください。例えば、夏は野外でバーベキューなどを楽しむ機会が多くなるので、加熱不足の肉に十分注意する必要があります。

食中毒予防は、「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つが大原則です。生肉には専用の調理器具を使い、使用後は中性洗剤でよく洗い消毒します。食べるための箸では生肉に触れないようにしましょう。また、手術で胃を切除した人は、食中毒になりやすいので、要注意です」

いかがでしたか?コロナ禍で、テイクアウトも増えていますので、気を付けましょうね。では、また明日。

(放送作家 健康医療ジャーナリスト早川真)

 

 

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