はじめに
温暖化、絶滅種の増加…環境問題はあまりにも大きすぎて、私たちには実感しにくいところもあります。
危機はそこまでやってきているのに、危機感がもてない…だからこそ、小さなことからでも始めよう。できることから始めている隣人に目を向けていこう。
家庭や地域、学校、団体、企業…いま、わたしたちの隣人はすでに、この大きな問題に少しずつ取り組んでいます。
一体、どんなことをしているの?現地に出向き、その活動にふれ、その心を伝えていこう。
小さなエコとの出会い、ふれあい。気づかなかっただけで、私にもできる…そんな考え方があったんだ…みんながんばっているんだ…
きょうよりもあした
少しでも環境について考えることができる…そんな取り組みを、東海テレビ「スーパーニュース」(月~金 17:30~19:00)の中で、去年4月から49回(1回約10分)伝えてきました。
『自然をふたたび』
失われた自然…その原因は私たち人間にありました。例えば 戦後大量に植えた杉などの針葉樹。根が浅く大雨が降れば山崩れを起こし、流木は下流の海の漁業にも影響を与えています。
○岐阜県「ドングリで森を守ろう」(8月22日)岐阜の山間で28年も前から森づくりを進める活動。会の合い言葉は、「子ども一人、ドングリ一粒」。々なテーマを掲げたイベントを開催し、積極的に子供達とも関わってきました。今では、活動範囲を広げ、年間に植樹する数は二千本に及んでいます。
○三重県「英虞湾の再生に挑む」(12月10日)真珠の郷には、貝の死骸が海に捨てられていました。その死骸はヘドロとなり、海の底に沈んでいます。私たちの手で失った自然は 私たちの手で戻すしかありません。
○三重県「大台ケ原、苔むす森を再び」(10月29日)
○愛知県「森の健康診断 間伐で光を!」(4月22日)登山客の増加で荒れた大台ケ原の森を再生する取り組み や、山林の状態を調べ間伐するNPO団体などを紹介しました。
失われた自然を取り戻すには、まだ、長い時間がかかりますが、「自然再生」に向けた動きが各地で広がっています。
『資源の循環』
捨てればゴミ、しかし再生できれば資源です。スーパーで、森で、旅館で、家具工場で、廃棄物を見直す動きが広がっています。
○愛知県「愛知のエコ野菜」(7月10日)テーマは“食品資源を活用した地域循環型農業の構築”。余りものの野菜や魚のアラで肥料や堆肥を作り、それを使って農家が野菜や肉を育て、再び店に並んで食卓へ、という仕組み。名づけて“食品リサイクルループ”。東海地方のスーパーで並ぶ「エコ野菜」は、味が良く、 朝並んだ野菜は、夕方には売り切れてしまうほど。
○岐阜県「森の発電所」(5月2日)木くずを使った木質バイオマス発電「森の発電所」。町で生産される“東濃ひのき”。立派なひのきも伐採され、住宅部材となるまでには約50%が木くずとなる。 この木くずと間伐材を燃料とした発電施設を2004年 に完成。この電力で直営工場の動力を確保し、余剰電力 は中部電力に売電。余熱で木材を人工乾燥している。
これまで燃やしていた木材を製品化することでCO2を削減。さらに、旅館も食べ残しを堆肥にすればそのまま資源になります。「いらない」を「もったいない」に変える様々な取り組みを紹介しました。
『新しいエコ技術』
新しいエコ技術を開発する研究者。どんな発想で思いつき、どんな方法でエコ技術に昇華させたのでしょうか。
○岐阜県「ゴルフ場の芝が新燃料」(2月24日)私たちが口にする酒。それは米、麦、芋などが原料です。酒づくりなど植物を発酵させる古くからの技術。それを燃料づくりに生かせないか?岐阜大学の研究者が目をつけた植物は「ゴルフ場の芝」。 これまでは焼却処分し、CO2の発生源となっていまし たが、最新技術で、芝1トンから200キログラムものバイオエタノールの抽出に成功しました。研究者は、地酒に続き「地エタノール」の時代が来ると、 期待しています。
○東京都「ドライミストで涼を」(8月12日)家にエアコンを置かない研究者。扇風機に霧吹きで水を 吹きかけ涼をとっていた。その発想で生まれたのが、ドライミスト。高い圧力で水を霧状に噴射し、気化熱の 原理を利用して、気温を2度から3度下げる装置です。 始めて実用化されたのが2005年の「愛・地球博」。 ドライミストでエアコンを使わない暮らしを追い求める 研究者は今、住宅用にと実用化を進めています。
○東京都「振動でエコ発電」(2月26日)研究者は小学生のときに、音や振動から電気を作るとい うアイデアを思いつき、大学2年から本格的に取り組ん できました。未来の夢は、街全体の振動を利用し、大きな発電所をつくることです。
『環境を学ぶ 未来へ』
未来へ、子どもたちと学ぶエコです。
○愛知県「菜の花に託すエコな未来」(4月8日)花壇で種まきをする園児。その後、「伸びた植物はどう なるのか…」園児に‘循環’を伝える取り組みが広がっ ています。愛知県田原市の保育園では、菜の花から油が でき、燃料のほか、ドレッシングなどの食用にもなるこ とを紹介。さらに絞ったカスが堆肥になり、資源の循環 につながることを教えています。
○東京都「スクール油田」(2月4日)学校が油田になる。教えているのは「油化」という技術 です。児童が持ち寄ったペットボトルのキャップを高温 で溶かし、気化したものを冷却して油に再生します。ポリ袋にあるプラスティックの容器の山。これらは機械 で生成すれば燃料へと再生できるのです。言っててみれ ば身近な油田、開発は自宅でも可能です。
○東京都「緑のカーテンとともに」(9月3日)ニガウリやキュウリ、ゴーヤなどツル性の植物を茂らせ て陽光を遮る「緑のカーテン」が全国的に広がっていま す。そのきっかけを作ったのは、小学校の音楽を担当す る教諭。児童は、緑のカーテンを育てて観察することに より、環境について学んでいます。
こうしたエコを学ぶ取り組みは各地で行われ、真珠の海で生態系を学ぶツアーや、CO2削減に取り組む電機メーカーの出前授業などを伝えました。この他にも、環境保護のための人材育成など未来につながる取り組みを紹介しました。シリーズ「追跡!エコファイル」は、これまで49回放送 すべての概略を紹介すると以下のようになります。
平成20年
4月
3日 てんぷら油で走れ!自動車 滋賀県豊郷町~黒煙も出ないエコな燃料、そこに法律の壁も~
10日 木を無駄にしない家具 岐阜県高山市~イタリア高級家具の原料は「飛騨の山の廃材」~
25日 電気代を下げる省エネコンサルタント 名古屋市~企業、住宅に潜む「電気のムダ」を徹底的になくせ!~
5月
2日 ゴミは燃料、森の発電所 岐阜県白川町~大量の木くずを原料に火力発電所を建設、電気を売却~
13日 「松の油」で無公害洗剤 三重県菰野町~使ったあとは自然界に戻るエコな洗剤、その理由は~
19日 環境授業、教師は「電機メーカー」 名古屋市~太陽光を電気に!将来の科学者を養成せよ~
28日 「草花クラブ」のエコロジー 京都市~ケースの中に作った「ミニ地球」~
6月
11日 電気を消して!「キャンドルナイト」 大阪市~夏至を前に100万人が参加して一斉消灯~
18日 ゴミをなくせ!エコな旅館に密着 三重県鳥羽市~生ごみはたい肥に、送迎バスの燃料はてんぷら油~
20日 マイカーやめ徒歩通勤へ 愛知県刈谷市~部品メーカーのエコポイント実験~
7月
9日 五感で学ぶ‘ネイチャーゲーム 東京都稲城市~木から鳴り響く音?その正体は~
10日 スーパー‘食べ物を無駄にしない 名古屋市~廃棄される「売れ残り」は資源の山~
8月
8日 自然環境を守る‘米作り’農家 滋賀県高島町~無農薬の田んぼがはぐくむ生態系~
12日 ドライミストで冷やせ 東京都港区~霧水をまくだけで温度低下、低エネルギーの冷却装置!~
20日 東本願寺のエコ活動 京都市~瓦は瓦に再生を!伐採木はベンチに!~
22日 飛騨の植樹で日本海を豊かに 岐阜県飛騨市~漁師が参加しての植樹、森と海の密接なつながり~
9月
3日 校舎を緑のカーテンで包め 東京都板橋区~ゴーヤを植えて温度を下げて、家庭科の食材にも!~
9日 太陽熱をはね返せ! 名古屋市~部屋の温度を下げるペンキ、原料にはガラスの粒が~
12日 鳥羽で‘エコツアー’ 三重県鳥羽市~旅館女将が海に潜って環境授業、そこに思わぬゴミが~
30日 環境日本一のまち、その理由は? 福井県池田町~自給自足の山村は、ゴミもゼロ!~
10月
8日 家の原料は「ゴミの木」 愛知県新城市~間伐材を使った家を売る企業、経営者は元営林署員~
22日 明るい森を取り戻せ! 三重県尾鷲市~太陽光が差し込む森、そこには豊かな生態系が~
24日 高層ビルの合間に田んぼを 東京都港区~ヒートアイランド対策の切り札になるか!~
29日 大台ケ原 再び苔むす森を 三重、奈良県境~登山客の増加で失われた大自然を取り戻せ~
11月
7日 湧水の里を巡るツアー 滋賀県高島市~アユが遡上しコイが泳ぐ川、普通の自然に注目が~
12日 人口1000人を目指せ!エコ村開村 滋賀県近江八幡市~家庭菜園に雨水タンク、さらにヤギの飼育も?~
19日 走って!ダイエット、発電 富山市~人力発電で動く遊園地、音楽も~
12月
2日 コウノトリが住む郷の復活を 兵庫県豊岡市~人口飼育のヒナを自然に放つプロジェクト~
10日 真珠養殖の地‘英虞湾再生を’ 三重県志摩市~養殖の死貝でヘドロの海に…干潟、藻場で復活を~
12日 海のエコラベル 京都府舞鶴市~乱獲を防げ!国際認証を取得せよ~
15日 目指せ!超省エネビル 愛知県豊橋市~エネルギー会社のビルは超省エネ~
24日 都心の水辺でエコツアー 東京都港区~よみがえった都心の水辺、生き物は…~
平成21年
1月
9日 エコでにぎわう商店街 神奈川県厚木市~商店街で生ごみリサイクル~
23日 水質を守る環境研究所 三重県伊賀市~なぜ?川が汚染 民間調査団が上流から原因を探る~
28日 絶滅寸前、伝統野菜を守る 奈良県高樋町~地域に残る食文化、次の世代へ~
30日 世界に知られる雨水博士! 東京都墨田区~ゲリラ豪雨の洪水を防げ~
2月
4日 スクール油田を発掘せよ! 東京都江東区~ペットボトルで「石油」づくり~
9日 呼べば来る!オンデマンドバス 滋賀県守山市~バスの定期運行を止めてCO2削減~
19日 アートな‘エコ島’ 香川県直島~厄介な産業廃棄物をアートな陶芸に?~
24日 ゴルフ場の芝が新燃料に! 岐阜市~エネルギーの地産地消を目指せ~
26日 振動利用 究極のエコ発電 東京都~歩くだけで電気に!発電床に迫る~
3月
6日 日本一の里山を発見 兵庫県川西市~炭焼、クヌギの守れ!NPOも支援~
11日 環境保護は人材育成! 長野県泰阜村~薪割り、陶芸、行動できる人材を育てる~
25日 都会に里山 大阪市~ミツバチが飛び交う繁華街で農業を
4月
1日 ‘省エネ’オフィス実験中 東京都港区~暖房のない部屋、発電できる机って?~
8日 菜の花に託すエコな未来 愛知県田原市~一粒の種が生み出す花、油、肥料~
22日 森を健康診断 愛知県豊田市~相次ぐ山崩れ、ボランティア調査隊が原因究明~
5月
8日 元祖‘スローライフ’ 愛知県春日井市~ニュータウンの設計士が‘脱文明’~
19日 便器メーカーがエコを徹底! 愛知県常滑市~作るとき、使うとき、壊すときもエコ~
平成21年 日本民間放送連盟 連盟賞特別表彰部門「放送と公共性」
FNN スーパーニュース シリーズ企画「追跡!エコファイル」(作品の内容)
環境問題に取り組んでいる“身近な人”を取材。「どんぐりの植樹をすすめるNP O」「あまりものの野菜をたい肥にするスーパー」「芝からバイオ燃料を作る研究者」「園児に楽しませながらエコを学ばせるお年寄り」など、環境保全や循環型社会の構築、最新のエコ技術、環境教育まで様々な内容でエコ活動について放送。期間は1 年2 カ月にわたり、ほぼ毎週、合計49 回放送。
<放送日時> 平成20 年4 月3 日~平成21 年5 月19 日 17:30~19:00「スーパーニュース」内
昨日は、ステキなご夫婦のお話でしたね。そのシリーズ企画の全記録です。当時のMC、中村アナウンサーと日本民間放送連盟で、プレゼンしたときのことを思い出しました。あれから、およそ10年。このエコな活動は、最近話題の「SDGs」持続可能な社会へ、引き継がれていることと思います。今一度、このようなシリーズ企画が、どのマスメディアでも必要だと思います。では、また明日。
(プロデューサー 早川真)