思い出深い、ご夫婦がいます。2009年、5月8日、東海テレビ スーパーニュース 「追跡!エコファイル」の最終回にご登場いただいた、津端修一さん英子さんのご夫婦です。きょう、書棚を整理していたら、いくつかの手紙が出てきました。
お手紙は、修一さんからでした。「早川真様 いいお仕事、拝見いたしました。ありがとうございました」。いつも、ご丁寧なお手紙や、ハガキ、そして、時には、手編みのマフラーまで、いただきました。
ご夫婦に初めてお会いした時、午前中にいらっしゃい、と。神戸から車で、愛知県の春日井市まで、女性ディレクターとふたりで、伺いました。ご自宅で野菜を育て、機を織り、季節とともに、ていねいに暮らすこころゆたかなスローライフ。雑木林とキッチンガーデンのある暮らし。お昼には、庭でとれた野菜と手作りのごはんをいただきました。なんとも心地のいい時を過ごさせていただきました。
「追跡!エコファイル」という番組の最終回にふさわしいご夫婦でした。そして、大変な栄誉のある賞もいただきました。当時の広報資料を以下に、掲載します。
FNNスーパーニュース シリーズ企画「追跡!!エコファイル」
ドラマやドキュメンタリーなど、全国の放送局やプロダクションが制作した優れた作品に贈られる「第47回ギャラクシー賞」の贈賞式が6月3日、東京都内で行われ、テレビ部門で、東海テレビ制作のドキュメンタリー「罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄 息子を殺された父」と「検事のふろしき」が、そして報道活動部門で、FNNスーパーニュース シリーズ企画「追跡!エコファイル」がそれぞれ奨励賞に選ばれました。
「ギャラクシー賞」は、放送批評懇談会が、放送文化の質的向上を目的に1963年に設立したもので、テレビ・ラジオ・CM・報道活動の4部門に分かれています。今回は、去年4月1日から今年3月31日までに放送された作品を対象に選考が行われました。
「罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄 息子を殺された父」(平成21年4月12日放送)は、裁判員制度と死刑をテーマに、犯罪被害者遺族のインタビューを通して死刑の現実と遺族の多様な思いを伝えました。「検事のふろしき」(平成21年6月27日放送)は名古屋地検の中に半年にわたってカメラを入れ、検事たちの姿を追った内容。そして、「追跡!エコファイル」は、環境問題に取り組んでいる“身近な人”を取材した企画で、月曜から金曜夕方放送している「スーパーニュース」内で平成20年4月3日から1年2カ月にわたり放送された全49回のうち12回分をダイジェストで紹介した作品です。
後に、このご夫婦、伏原監督作品「人生フルーツ」として、日本はもとより、世界へ発信されるほどの素敵なドキュメンタリー映画に昇華していきました。
私が担当した「追跡!エコファイル」最終回の企画書がありましたので、添付しておきます。
「都会の元祖スローライフ」
▽春日井市、高蔵寺ニュータウンのど真ん中で、半自給自足の暮らしを送る素敵な老夫婦がいる。津端修一さん、英子さん。結婚して50年。80歳を過ぎて、今が一番幸せと、野菜作りに精を出す。
▽庭に植えた苗木は30余年の時を経て雑木林に育ち、その落ち葉が土を肥やして野菜や果物が実らせる。この畑には心豊かな夢がある。
▽公団職員として高蔵寺ニュータウンを設計した元広島大学教授の修一さん。英子さんと二人三脚で土づくりから始め、今では120種類もの野菜や果物が収穫できるようになった。
▽雨水をためて水をまき、落ち葉や生ゴミで堆肥を作る。農具や家のメンテナンスまで自分たちでこなす。季節とともにていねいに暮らす。
▽「風邪以外に、お医者さんにかかったことがない。食べるものが大事」というおふたり。野菜や果物は一年中、庭でとれたものばかり。米は知り合いの農家の方と物々交換。魚や肉はなじみの店から50年以上も買い続けている。
▽だんだん美しくなる人生。全部はできないけれど、私たちも少しずつ始めてみようかな…そう思ってくれることがおふたりの願い。
▽最終回は、都会の元祖スローライフを垣間見てエコな暮らしを考え直す。
私の仕事は、本当に恵まれています。こんな素敵なご夫婦と出会えて。今日の最後は、修一さんにいただいたお手紙から引用させていただきます。「大きな雑木林と小さな雑木林、そしてキッチンガーデンをつないで、持続的にゆたかな環境づくりが、初めてできるようになりました。さて、この環境づくりの主役は、もちろん女性。子育てを終えた元気な50歳代のお母さん。それを、あたたかくサポートするのは男性です。夫婦仲良く、そして30年をかけて80歳代ともなれば、〈ステキなおばーさん・おじーさん〉になること請け合いです」
では、続きは明日。
(放送作家 プロデューサー 早川真)